葬儀費用には使えない!死亡保険金は入るまで約1週間
大切な人とのお別れ。バタバタとお別れの準備に追われながら、ふと頭に浮かんだのは「お葬式の費用はどうしよう」。
死亡保険金は、請求してから入るまでに一週間ほどもかかってしまうことをご存知でしょうか。
筆者もお葬式の費用が死亡保険金からは支払えないことを知り、絶句したことを覚えています。
そこでこの記事では、
この記事で学べること
- 生命保険の死亡保険金はいつ入るのか
- 死亡保険金の請求の流れと必要書類
- 受取時に発生する税金から保険金の使い道
までを、1記事にぎゅっとまとめて説明していきます。
気持ちの整理がつかない中での請求手続きは、思ったよりパニックになってしまうものです。いざというときの参考にして頂ければと思います。
いつ入る?支払われるまでの期間
大切な人が亡くなると意外とお金がかかります。
日本消費者協会の「葬儀についてのアンケート調査」によると、葬儀にかかった費用の総額は全国平均でなんと約196万円程。
葬儀の形態によって金額に違いは出てきますが、100万円以上のまとまった金額をぽんと支払える方はそう多くはないのではないでしょうか。
そうなると、「葬儀費用は死亡保険金で」と考える方もいるでしょう。しかし、死亡保険金を葬儀の費用に当てるのは現実的ではありません。
死亡保険金はすぐに給付されない
生命保険の死亡保険金は、請求に必要な書類が不備のない状態で保険会社に届いてから、5日~1週間程度で入金となっているものが多いよう。
原則、請求に必要なすべての書類が当社に到着した日の翌営業日から数えて5営業日以内にお支払いします。
引用:第一生命
これはあくまでも目安となり、書類に不備がある場合、審査が長引いた場合などは、支払いまでに1ヶ月以上がかかってしまうこともあるよう。
ちなみに、お葬式の費用は葬儀の直後、または一週間以内の支払いとなっている場合が多いです。
必要書類を集め、請求書の作成・送付などの時間を考えると、死亡保険金で葬儀費用をまかなうというのは難しいいうことが分かると思います。
お葬式代はどうしよう
では、お葬式代はどう準備すればよいの?そう思われると思います。
故人の預金などの遺産から葬儀費用を支払うということも考えられますが、遺産相続の際にトラブルが発生する可能性があり、複数の相続人がいる場合、もしくは故人に借入金がある場合はおすすめできません。
まずは、お葬式をすると弔問客から香典を頂けますので、そのまま香典をお葬式代の費用に当てると良いでしょう。
香典だけで葬儀費用の全てを賄えるケースは少ないと思いますが、3分の2ぐらいは賄えるケースが多いようです。
香典だけで足りなかった場合は、遺族が残りの費用を一度負担して、死亡保険金が支払われた段階で精算するのが現実的です。
死亡保険金の給付までの流れは4ステップ
保険会社によって多少の違いはありますが、一般的な死亡保険金の請求手続きは以下のような流れとなります。
- 保険会社に連絡をする。
- 必要書類を準備し保険会社へ送付。
- 保険会社が支払い審査を行なう。
- 審査後、指定口座へ入金される。
下記で、1ステップずつしっかり確認していきましょう。
1、保険会社に連絡する
故人の保険証券を探し、該当の保険会社に電話などで問い合わせます。担当者がついている場合は、担当者に直接連絡をするとスムーズですね。
保険証券番号や亡くなられた日にちや原因、亡くなられる前の入院・手術の有無などを聞かれる場合がありますので、事前に準備してから連絡をすると良いでしょう。
事前に確認しておきたい事項
・被保険者の名前
・亡くなられた日
・死亡原因(病死か事故死か、病名や事故の状況)
・保険金受取人の名前(被保険者との続柄と連絡先)
・亡くなられる前の入院の有無
2、必要書類を作成し保険会社へ送付する
保険会社から郵送されてきた必要書類を作成し、保険会社へ返送します。保険会社指定の書類の他には死亡診断書、本人確認書類(運転免許書や保険証のコピーなど)などを合わせて提出する必要がある場合があります。
死亡診断書は生命保険の受け取りだけでなく、年金や銀行関係の手続きで必要となるので10枚ほど余分にコピーしておくのがおすすめです。
3~4、支払い審査~入金完了
保険会社では送付された書類で死亡保険金の支払い審査を行い、問題がなければ、指定口座へ入金がされます。
支払い完了後は、支払金額などを記載した明細書が送付されます。毎年各保険会社でも数件ですが、支払漏れ等も発生しているようなので、しっかりと支払い内容を確認できると良いですね。
支払われない場合もある
実は、死亡保険金が申請しても支払われないケースもあります。
ここでは、死亡保険金が支払われないケースをいくつか紹介しておきます。
故意による過失死亡する可能性があることを知った上での行為による死亡。
短期間での自殺 | 契約してから、短期間(1年~3年など保険会社による)に被保険者が自殺をした場合。 |
---|---|
法律違反で死亡 | 飲酒運転や違法薬物などで被保険者が死亡した場合。 |
告知義務の違反 | 病歴を保険会社に申告しなかったり、嘘の申告をし、その病気が原因で死亡した場合。 |
死亡保険金を不正に受け取ろうとするような場合については、基本的には死亡保険金は給付されないというように覚えておくと良いでしょう。
事故死の場合
死亡保険金は事故死でもおり、事故死の場合「災害死亡保険金」が死亡保険金に上乗せして支払われる場合があります。
ご加入の生命保険に元々セットでついていたり、別途、特約で付加されているケースがありますので契約内容を確認してみると良いでしょう。
例えば、病気での死亡なら1,000万円のところ、事故の場合なら2,000万円がおりたりと、事故と病気ではおりる保険金に大きな差が出てきます。
その分、保険金の給付条件は通常の死亡保険金よりも厳しくなり、事故状況報告書などの提出を求められることがあります。
知っておきたい!死亡保険金にかかる3種類の税金
続けて、死亡保険金受取時に絶対に知っておきたい、保険金受取時にかかる税金についてまとめていきます。
死亡保険金を受け取った場合には、基本的に「所得税」「相続税」「贈与税」の内のいずれかが税金としてかかる可能性があります。
実際にどの税金がかかってくるのか、判断をする際の判断材料としては以下の3つがあります。
- 被保険者は誰か?(保険の対象となっている人は誰か?)
- 保険料の負担者は誰か?(誰が保険料を支払っていたか?)
- 保険金の受取人は誰か?
早速、各ケース1つずつ見ていきましょう。
所得税がかかるケース
死亡保険金に所得税がかかるケースは以下、
- 保険料の負担者
- 保険金の受取人
が、同じであった場合です。ご自身を受取人として設定した家族の保険の保険料を、ご自身が支払われていたケースなどが挙げられますね。
該当例
しかし母親が亡くなり、Aさんは死亡保険金1,000万円を受け取ることになりました。
死亡保険金にかかる所得税の計算式は、以下の通りとなります。
※以下、保険金を一時所得として受け取った場合となります。
一時所得=死亡保険金-既に支払済みの保険料-50万円(特別控除)
課税対象となる金額=一時所得÷2
※一時所得の金額は、その死亡保険金以外に他の一時所得がない場合、受け取った保険金の総額から既に払い込んだ保険料又は掛金の額を差し引き、更に一時所得の特別控除額50万円を差し引いた金額となり、課税の対象になるのは、この金額を更に1/2にした金額となります。
上記のケースであれば、
一時所得=1,000万円-800万円-50万円=150万円
課税対象となる金額:150万円÷2=75万円
となり、75万円が所得税としての課税対象となります。
相続税がかかるケース
死亡保険金に相続税がかかるのは、
- 被保険者
- 保険料の負担者
が、同じであった場合です。受取人を家族としたご自身の保険の保険料を、ご自身が支払われていたケースなどが挙げられますね。
計算してみよう
該当例
父親が生前に「自身(父親)」を被保険者として生命保険に加入し、「父親」が月々の保険料を支払っていました。その後父親が亡くなり、死亡保険4,000万円が支払われることになります。そして「妻、長女、次女」の3人に法定相続人として死亡保険金を受け取る権利が発生したとします。
妻 | 2000万円 |
---|---|
長女 | 1000万円(相続は放棄) |
次女 | 1000万円 |
死亡保険金にかかる所得税の計算式は、以下の通りとなります。
個々が受け取った死亡保険金-非課税限度額の総額×【個々が受け取った保険金÷全ての相続人が受け取った死亡保険金の総額(相続放棄した人が受け取った分は含めない)】
となりますので、まず非課税限度額を計算しておきます。
死亡保険金の非課税限度額
ちなみに法定相続人以外の人、または相続を放棄した人が死亡保険金を受け取った場合、非課税限度額は適応されないことを覚えておきましょう。
非課税限度額=500万円×3人(法定相続人の数)となり、 非課税限度額は1,500万円と計算出来ますよね。
よって、個々の死亡保険金に対する課税対象金額は次の通りです。
妻 | 2,000万円―1,500万円x【2,000万円÷(2,000万円+1,000万円)】=1,000万円 |
---|---|
長女 | 1,000万円(相続放棄した為非課税限度額は適応不可) |
次女 | 1,000万円―1,500万円x【1,000万円÷(2,000万円+1,000万円)】=500万円 |
このように、相続税が課税されるということになります。
贈与税がかかるケース
死亡保険金に贈与税がかかるのは、
- 被保険者
- 保険料の負担者
- 保険金の受取人
が、全て異なっていた場合です。家族の保険の保険料を自身が支払い、自身が保険金を受け取ったケースなどが挙げられますね。
計算してみよう
該当例
課税価格:個々の受け取った保険金 -110万円(基礎控除額)
納税額: 課税価格 ×30%(税率)-90万円(控除額)
※贈与税は年間で110万円まで「基礎控除額」として非課税となります。
※特例税率で1,000万円以下の場合は税率30%で控除額は90万円となります(下図参照)。
引用:国税庁
上記のケースの場合であれば、
課税価格:1,000万円-110万円(基礎控除額)=890万円
納税額:890万円×30%-90万円=177万円※未成年の場合は税率が異なります。
となります。贈与税がかかる場合、保険の対象となっている人、保険料の支払人、受け取り人が全て異なっている場合と覚えておきましょう。
申告方法
万が一、 相続税・贈与税を支払う必要がある場合には、税務署へ赴き直接申告、または郵送、国税電子申告・納税システム「e-Tax(イータックス)」で申告が可能です。
参照:国税庁 e-Tax
ご自身で申告することも可能ですが、計算が複雑で手間がかかるので、税理士に依頼することも検討すると良いでしょう。
所得税については、確定申告をする必要があります。自営業の方は、毎年の確定申告時に一緒に申告します。
会社員の方で会社が年末調整をしてくれている場合は、会社の源泉徴収で確定申告をし、所得税の金額を修正することになります。
さて、ここまでいかがでしたでしょうか?生命保険の死亡保険金の請求から給付までのイメージがだいぶつかめたのではないでしょうか?
最後に、保険金の使い道について説明します。
何に使えば良いの?保険金の使い道
死亡保険金の場合、1,000万円以上のまとまったお金となることもあり、何に使うべきか悩んでしまう人もいるでしょう。
また、銀行で死亡保険金の受け取りの際に、「投資信託で運用はいかがでしょうか?」「いざという時の為に保険に加入しておくのはどうでしょうか?」などと勧誘を受けることもあるようです。
しかし、気持ちの整理ができていない段階で、何となく契約してしまい、故人が残してくれた大切なお金を無駄にしてしまうのは悲しいですね。
筆者は勧誘を受けても、まずその場で契約をせずに家に帰って落ち着いてゆっくり、保険金の使い道について考えてみることをおすすめします。
保険金はこう使うべき
では、入った保険金はどう使えば良いの?そう思われると思うので、入った保険金の使い方を考えてみます。
まず、家のローンや借金のある人はそれの返済に当てるのが先でしょう。次に、生活費に余裕がない方は 入った保険金を無理して運用をせずに生活費に当てるべきです。
直近10年間の間に子供の学費や家のリフォーム費用など大きな資金が必要になってくるのであれば、そちらの資金に当てるのが良いでしょう。
保険金をすぐに使わないのであれば、利率の良い定期預金や、個人向け国債にあずけて資産損失のリスクを取らずに運用するのもひとつの手です。
10年以上使う予定がないお金は運用もあり
10年以上使う予定がないお金と判断出来るのであれば、投資信託や外貨預金、1,000万円以上のまとまったお金になる場合はヘッジファンドでプロに運用をお任せしてしまうのも得策ですね。
大金が入ったからといって、浪費したり、知識がないのに株式投資や仮想通貨などのハイリスク商品へ一括投資するのはおすすめできません。
まずは、深呼吸。保険金は逃げてはいきませんので、おちついて使い道をゆっくり考えてみることが大切です。
まずは、高額資産の運用法に関する情報集めから始めてみましょう。
手続きが面倒でもしっかり請求
既述の通り、生命保険の死亡保険金は入金まで時間がかかります。必要書類は事前に準備しておくなどして、スムーズな請求を行いましょう。
気持ちが落ち着いたら、故人が残してくれた大切なお金の使い道をゆっくり考えてみると良いですね。
本サイトでは、他にもお金に関する為になる記事をアップしていますので是非参考にしてみてください。
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